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絹本著色仏涅槃図
真言宗大覚寺派に属する高越寺に伝わる、絹地に彩色が施された縦
154.5cm、横120.0cmの仏涅槃図である。涅槃図とは、釈迦入滅(しゃかにゅうめつ  )の情景を描いたもので、仏教において釈迦の冥福(めいふく)を祈るための法要(  ほうよう)である涅槃会(  ねはん  え)の際に用いられる仏画である。画面中央には沙羅双樹(さ  ら  そうじゅ)の下で臨終(りんじゅう)した釈迦が描かれているが、右腕を手枕として右脇を下にして横たわる姿は、鎌倉時  代の特色という。釈迦の周りを取り囲むように描かれているのは、釈迦の  死を悼いたむ様子の十大弟子、八部衆、二王といったいわゆる五十二部衆や、象、牛馬などの動物である。また、画面右上部には釈迦の母である摩耶  夫人(まやぶにん)が描かれている。巻き止めには「唐絵涅槃像  慶長三年三月廿一(21)日寄進  南源六」との墨書(ぼくしょ  )があることから、1598(慶長3)年に当寺へもた
らされたこと、また、「嘉永五  壬子五月法印勇真再修復  高越  密什宝」とも書かれていること  から、1852(嘉永5)年に修理さ  れたことがわかる。さらに、  仏画を収める箱には天正年間  (1573~1592)の兵乱の際に一  時土佐(現高知県)に持ち出され  た旨が記されている。徳島県内  で確認されている仏涅槃図では  最古の作品と考えられており、  貴重なものである。
吉野川市教育委員会