阿波和紙会館では、いんべの名勝を紹介しています。

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種穂山
高越山の一文脈が川田駅の西方に延びて,吉野川に突き出している山を種穂山という。仁和2年(886)の吉野川の大洪水は,岩津と四国山脈を分離し,その後,承徳2年(1098)以後の河道の変遷により,この山領は,吉野川を北方におし出し,ちぢめた形になり,狭窄部河中160メートルの吉野川地溝帯における最狭地となって,岩津の深渕をつくっている。
 古来,有名な「岩津の渕」と呼ばれ,四季常に紺青に広くよどみ「大ナマズ」が住むとの伝説を秘めている。そのため,長さ75メートルの「鼓山トンネル」が.その山麓を貫通し,本町と美馬郡穴吹町との境を画している。
 種穂山は,また昔から景勝の地としても有名で,頂上よりは,はるかにかすむ淡路,沼島などの島を眺めることができる。高さが379メートルの山頂にある種穂神社は「天日鷲命」をまつり,忌部族ゆかりの地と伝えられている。
 山中は巨大な樹木がよく生育し,殊にカヤが多く,また,キクの一種であるカヤランが多数見られる。そのほか、ギンリョウソウ(ユウレイソウ)を始め,特殊な植物も多い。種穂山の北向の山は「鼓の山」と呼ばれ、西行の和歌と言われる「鼓山うち出で見れば西林 岩津というはおしの住み家」の作が伝えられている。山間を流れてきた吉野川は,この山の端を回るところから、ようやく四国三郎としての様子を示し,吉野川平野をゆうゆうと流れ去っている。
 なお,山麓の舟戸から,阿波町,岩津にかかる岩津橋は、長さが151.5メートル,幅が1.5メートルのつり橋で,昭和33年8月に完工した。橋は小さいが,吉野川の数多い橋の中でも最も美しい。舟戸は、来吉野川交通の要所として,また徳島鉄道の終点駅として、大正3年(1914)池田駅が開通するまで,香川,高知への駅馬車連絡駅として栄えた。